犬がリードを引っ張る本当の理由

スポンサーリンク

私は生まれてからずっと、そばに犬や猫がいる生活を送ってきました。

数えきれないほどの時間を彼らと過ごし、その一挙手一投足を観察し続けてきた私には、巷のしつけ本とは少し違う「独自の犬理論」があります。

今日は、多くの飼い主さんが悩む「リードの引っ張り」について、本当のところをお話ししますね。

第1章:なぜ犬はリードを引くのか?常識を疑うことから始まる観察学

よく「犬がリードを引っ張るのは、引っ張れば前に進めるという成功体験を繰り返したからだ」と説明されます。

でも、何十年も犬たちを間近で見てきた私の目から言わせれば、それは人間の理屈を後付けしただけの「えせ理論」に過ぎません。

犬たちはそんな風に「こうすれば、ああなる」といった損得勘定で動いているわけではないのです。


そんな損得勘定よりも、もっと根源的な理由が彼らにはあります。

犬という生き物は、生まれた瞬間から「群れ(パック)」の中での自分の役割を本能的に探しています。

彼らにとって散歩とは、単なる運動の時間ではなく、群れの中での立ち位置を確認し合う大切な儀式のようなものです。

私が観察してきた限り、彼らは常に「今、誰がこの群れを導いているのか」を肌で感じ取ろうとしています。


この「立ち位置の確認」が、リードを引くという行動に直結しているのです。

つまり、愛犬がグイグイとリードを引っ張って前に出るのは、成功体験の積み重ねではなく、その瞬間に「自分がこの群れを主導しなければならない」というスイッチが入ってしまっているからなのです。

これは理屈ではなく、彼らの奥底にある生存本能に近い「感覚」の問題です。


では、その「感覚」が犬の体の中でどのようにつながっていくのか、もう少し深く掘り下げてみましょう。

愛犬がリードを張って一歩前に出たとき、それは単なる移動ではありません。

「自分が先頭に立っている」という状態そのものが、彼らに「自分が決める役目だ」と身体で覚えさせてしまうのです。

一度その位置に定着してしまうと、止まるだけではこの感覚は消えません。


第2章:身体が覚えてしまう「先導者」の感覚

犬がリードをグイグイと引っ張って前を歩いているとき、彼らの頭の中では何が起きているのでしょうか。

それは、単に「早くあそこに行きたい」という欲求ではありません。

実は、一歩前に出た瞬間に、犬の身体の中では「自分がこの群れを率いるリーダーだ」というスイッチがカチッと入ってしまうのです。


このスイッチが入ると、犬は周りからの刺激を「自分事」として捉え始めます。

前に立つということは、誰よりも早く新しい匂いや動くもの、つまり「刺激」を真っ先に受け取るということです。

角を曲がった先に何があるか、向こうから来るのが味方か敵か。

そのすべての情報を最初に受け取る立場にいることで、彼らの神経は研ぎ澄まされ、自分が判断しなければならないという「責任感」に支配されます。


そして、その緊張感が、さらにリードを引く力へと変わっていくのです。

一度この「先導している」という感覚を身体が覚えてしまうと、彼らにとってそれが当たり前の状態になります。

自分の力で方向を決め、速度を決めることが自分の役目だと思い込んでしまう。

こうなると、ただ飼い主が立ち止まって「ダメだよ」と教えるだけでは、この深い部分にある感覚はリセットされません。


なぜなら、立ち止まったとしても、犬の位置が「先頭」であることに変わりはないからです。

多くの飼い主さんは、引っ張ったら止まる、という練習をしますが、私の経験上、それだけでは不十分です。

たとえ止まっていても、犬があなたの前にいる限り、彼らの意識は「自分が先導役」というモードのまま。

この身体に染み付いた「先導の構図」そのものを変えない限り、リードが緩むことはないのです。


第3章:群れを守るための「重い責任」と戦う犬たち

犬が先頭を歩くということは、彼らにとって「自分がこの群れを安全に進める責任者だ」という意味を持ちます。

彼らがリードをグイグイ引いて歩くとき、その瞳は決して遊んでいるわけではありません。

常に周囲を警戒し、敵が来ないか、危険なものはないかと、まるで見張り役(スカウト)のような顔をしています。


この責任感があるからこそ、彼らは時に過剰な反応を見せてしまうのです。

例えば、散歩中に他の犬や知らない人に吠えてしまうことがありますよね。

これは、先導役としての彼らが「敵が来た!あっちへ行け!」と威嚇して、後ろにいる大好きな家族を守ろうとしている証拠です。

彼らにとっては、それこそが今の自分のポジションにおける「正しい仕事」なのです。


いい匂いがする方へ強引に進もうとするのも、実は彼らなりの判断基準があります。

「あっちに美味しそうなものがあるぞ」「こっちは安全な道だ」という情報をいち早く察知し、群れをより良い方向へ誘導しようとしているのです。

危険な匂いを感じれば、戦うべきか避けるべきか、小さな頭で懸命に判断しています。

つまり、リードを引っ張る力は、彼らが「群れを安全な方へ導こうとする意志の力」そのものなのです。


しかし、この「自分がやらなきゃ」という状態は、犬にとって非常に大きなプレッシャーでもあります。

ずっと気を張って、周囲を警戒しながら歩き続けるのは、本当はとても疲れることです。

私たちが「わがままで引っ張っている」と思っている裏側で、彼らは群れの安全を一心に背負い、一瞬も休まる暇がないのかもしれません。

この緊張から彼らを解放してあげることが、真の信頼関係への近道となります。


第4章:役割を交代する「立ち位置」の魔法

引っ張る癖を直したいなら、テクニックよりも先に「立ち位置」を決め直すことが重要です。

まずは、愛犬を自分の後ろにつけて歩くことから始めてください。

これが、彼らに「今は君が先導しなくていいんだよ」と伝える一番のメッセージになります。


立ち位置が決まったら、次は散歩の主導権を完全にあなたが握ります。

歩き出すタイミング、進む方向、そして歩く速度。

これらすべてを、犬ではなくあなたが決めてください。

これは成犬になってからでも遅くはありません。

慣らすまでの間は、常に「飼い主より後ろ」を基本のポジションに固定するのです。


もし愛犬が前に出ようとしたら、冷静に対処しましょう。

決して怒鳴ったり、リードを強く引いてぶつかったりしないでください。

ただ、静かに元の「後ろの位置」に戻してあげるだけでいいのです。

何度も繰り返すうちに、犬は「自分の場所はここなんだ」と位置を確定させていきます。


この「後ろにいる」という状態には、犬にとってとても大きな意味があります。

前を歩くのは飼い主の役目。

外からの刺激を最初に受け止め、判断するのも飼い主。

そう確信したとき、犬の「主導スイッチ」はオフになります。

自分で決める必要も、警戒する必要もなくなった彼らは、心から安心し、リードは自然と緩んでいくのです。


まとめ:位置を変えれば、心が変わる

リードを引っ張るという行動は、巷で言われているような「成功体験の積み重ね」などではありません。

それは、愛犬が「自分がこの群れを守らなければならない」と必死に頑張ってしまっているサインなのです。

私たちがやるべきことは、彼らを叱ることではなく、その重い責任から解放してあげること。

あなたが先導役(リーダー)を引き受け、彼らを後ろへと導いてあげれば、他の犬に吠えたり、無理に引っ張ったりする必要はなくなります。

「今日は私が守るから、君はのんびり歩いていいんだよ」。

そんなメッセージを背中で語りながら、明日からの散歩を楽しんでみてください。

役割さえ決まれば、リードは驚くほど軽くなり、愛犬との絆はもっと深いものになるはずです。

スポンサーリンク

関連記事

ページ上部へ戻る